2019年4月にMRの情報提供のルールが劇的に変わった

2019年4月、MRの情報提供に関するルールが劇的に変わりました。今まで普通に行ってきた情報提供の活動が、これを機に一気に制限されたのです。
例えば、提供する情報は会社からの承認を受けた、決まったもの以外は禁止となりました。なので新しく医学雑誌に掲載された論文や医学学会で発表された情報をいち早く届けるといったことは厳禁となります。
また自社医薬品のプロモーションに関して、添付文書に記載された内容を逸脱した情報の提供も一切禁止になります。なので非常にエビデンスの高い臨床試験において有用性が証明され、医学学会や実臨床下でもすでに広く認知されているような薬剤の使い方だとしても、それをMRが情報提供することは重大な違反となるのです。
他にも説明会のスライドのルール(スライドの順番、構成、各スライドの割合など)や医療従事者からの質問対応(用法用量外の質問を受けた際にはMR自身がそれに答えることは禁止)、さらには自社医薬品の講演会においても講演してもらう演者の先生に求める水準も一気に高くなりました。おそらくどこの製薬会社でも、このルール変更に対応するため新たなシステムが導入されたり廃止になったり、会社によってはMRの負担が増大して悲鳴を上げているところも少なくないと聞きます。
それでは、このルールの変化はMRの仕事にどのような影響を与えるのでしょうか。
MRの個別の能力は問われない時代に?

今後はMRの個人としての能力はどんどん不要となっていくことが予想されます。これまではMR個人が自社医薬品が絡む疾患についてどれだけ情報収集をしているか、どれだけ勉強しているかがMRの能力の差となっていました。
例えばとある疾患の医学学会学術総会が開かれたとして、その情報をいち早くキャッチし、自分なりに解釈し、自分の担当施設の課題に当てはめる。こういった活動はMRの実力差をつける大きな要因となっていました。
また自社医薬品が他の施設でどのような使い方がされているか、どのような患者像に対して効果を発揮する見込みがあるか、医療従事者からのニッチな質問に対してもノータイムで回答することでディスカッションが生まれ、医療従事者からの信頼や評価を得ることができました。けれども今回改定となったルールによって、それらの情報提供は一切禁止され流ようになりました。
会社が用意したパンフレットに記載されていることしか話すことができないのであれば、MR個人の学習など大した差にはなりません。与えられた説明文、セールストークをその通りに話すだけならばもはやボイスレコーダーにだってできてしまいます。
自社医薬品の説明会に関してもこのルール改定は非常に残念でなりません。説明会をする相手…医師なのか薬剤師なのか、あるいは看護師なのかによっても求められる情報は異なりますし、また施設や診療科によっても課題は大きく異なります。
なのに、説明会のスライドや内容は変えることができず、本社が決めた通りのことしか話すことができなくなりました。これでは医療獣医者の持つ潜在的な、あるいは個別のニーズに対して答えることができず、医療従事者もまたMRに対して価値を感じることができなくなってしまいます。
必要なのはルールを逸脱しないようマニュアル通りに話す能力のみ。これではMRが不要と言われてしまったとして、何も言い返すことができないでしょう。
今後のMRの仕事はどう変わる?必要な素質は?
医師とだけ面会していればいいMRの時代はとっくに終わっている
もはや数年前から言われていたことですが、まずMRは医師とだけ面会すればいいという考えは早々に捨ててしまわなければいけません。患者に対する治療方針の決定権は医師から多くの他の職種の医療従事者へと分散されており、また他職種連携によるチーム医療の重要性は今後ますます増大していくことが容易に想像できるからです。
大事なのは視野の広さと想像力
例えば病院での活動の場合、医師や薬剤師の他に病棟や外来の看護師、検査が必要な疾患であれば検査科や放射線科、薬剤の使用に食事が絡むようであれば栄養科なども重要です。また抗がん剤関連なら化学療法室は常識ですし、脳血管疾患や心疾患ならリハ科を外すことはできません。
他にもソーシャルワーカーや地域連携室、クラークなどの事務職員との連携も大事ですし、院外の提携・関連施設とのスタッフとも繋がりを作っておくと更に仕事は進めやすくなります。
とにかく大事なのは、自社医薬品が関連する疾患についてどんな人が関わってくるのか、患者が発病してから退院して家庭に戻るまでにどんなルートを辿ってくるのかを想像することです。そして視野を広く持ち、様々な人とコミュニケーションを取っていく中で自分に価値を感じてもらえる人を増やすことです。
自分に価値を感じてくれる人が増えれば増えるほど、自分がプロモーションやプレゼンをする以上の見返りがあるということを知っておくと良いでしょう。
様々な職種の医療従事者に情報を届けるために
多くの医療従事者に自分の価値を感じてもらうためには、その人にとって有益な情報を提供する必要があります。そのためには、まず第一にどの医療従事者がどんな仕事をしているのかを知ることから始めなければいけません。
とは言っても施設によってその職種が担当する仕事は変わりますので、結局はコミュニケーションを取っていく中で探っていかなければいけません。場合によっては少しうざがられたり怪しまれたりすることを覚悟で色々と聞き出さなければいけないでしょう。
またその施設やスタッフがどこを目指しているのか、どこに課題があるのかを探る必要があります。これについては医療従事者に直接聞くことも大事ですが、あらかじめ公的に公開されている情報を元に推理することも大事です。
課題というものは総じてなかなか見えづらいもので、ともすれば当事者たちもその課題を認識していないことがよくあります。そこについてこちらから指摘し気づきを与えた上で、その課題解決のために自社医薬品や自分たちMR、そして会社ができることを提案していくと良いでしょう。
MRの将来は不安すぎる?今後のMRに必要な素質は?

2019年4月にMRの情報提供のルールが大きく変わり、MRのあり方も劇的な変化を求められています。MRの仕事がどう変わるか、今後何をしていくべきか、MRという自分自身にどう価値を付加していくか、真剣に考えていかなければいけないでしょう。