2018年12月、脳卒中・循環器表対策基本法が成立しました。
12月10日の衆議院本会議で、議員立法の「脳卒中・循環器病対策基本法」が全会一致で可決、成立した。同法では、脳卒中や心筋梗塞などの循環器病の予防推進と、迅速かつ適切な治療体制の整備を進めることで、国民の健康寿命の延伸と医療・介護費の軽減を目指す。
日経メディカル
名前からしてなんとなく法律の内容は想像がつきそうですが、具体的に何をするのかはっきりしないのも事実です。ここでは、そんな脳卒中・循環器病対策基本法について紹介していきます。
脳卒中・循環器病対策基本法制定の背景

そもそもは2009年、脳卒中関連の複数の団体が脳卒中対策の法律が必要であることを提唱したことから始まります。脳卒中の急性期における治療の普及や予防に関して、法律を制定して国として取り組む必要があるとしたものです。
けれども直後の政権交代や東日本大震災の影響で法制化は難航。2013年には尾辻秀久参議院議員を会長とする「脳卒中対策を考える議員の会」発足し、その法制化に向けた具体的な活動も活発化しておりましたが、衆議院解散・総選挙の影響により廃案となってしまいました。
審議が進まなかった要因の1つとして、個別疾患に対していちいち基本法を作っていたらきりがないという批判がありました。2006年にはがん対策基本法が成立しましたが、がん全般に関して定めたがん対策基本法に比べて、脳卒中単体で法律を定めてしまうわけにはいかないというのです。
そこで、脳卒中同様に日本の死因第2位の心臓病を含む循環器疾患の対策に苦慮する日本心臓財団や日本循環器学会を含む循環器関係の団体からの申し入れもあり、これらを合わせた基本法の法制化に取り組むことになったのです。どちらも急性期における迅速な治療が必要なこと、リハビリテーションが再発抑止とQOL向上に重要な役割を果たすこと、発症の原因やその予防にも似通ったところがあることなど、共通点が非常に多かったこともこの脳卒中・循環器病対策基本法が具体化される大きな要因となりました。
なぜ脳卒中・循環器病対策基本法が必要なのか

脳卒中と心臓病を中心とした循環器疾患は、要介護の原因の約1/4を占めると言われており、また医療費についても2つの疾患を合わせると2割を超えるとされています。今後医療費などが増大していくと言われる中、その治療費や介護費の削減に向けた対策が国としても急務だったということです。
また2006年に成立したがん対策基本法と比較して法律の整備が遅れていたということもあります。
この法律に何が求められているか?

この法律では、高齢者の脳卒中や循環器病の課題に応えるだけではなく、次世代が脳卒中や循環器病にかからないようにするための予防を支援するところまでが含まれます。
急性期・亜急性期医療に対して
現在循環器疾患、脳卒中の治療は急速に進歩していると言われています。しかしながら、そういった進歩した治療を受けることができるのは、ごく一部の急性期病院のみであることもまた事実です。
そのためどの地域でも新しい治療、進歩した治療が受けられるよう治療の均てん化が求められています。具体的に言えば、地域の中核病院の整備や適正な配置がそれに含まれます。
また亜急性期での迅速なリハビリテーションが患者の早期自立や健康寿命の延長に繋がることも言われており、これらの普及も期待されています。患者の予後という面だけではなく、QOLの改善まで見据えた法整備なのです。
予防に対して
心臓病などの循環器病や脳卒中の発症後、適切なリハビリテーションや生活習慣改善による再発の予防は、患者の予後やQOL改善において極めて重要です。また発症後の重症化を防ぐための最新の治療の普及も、この脳卒中・循環器病対策基本法に求められています。
また再発の予防ももちろんですが、未病の段階での一次予防についても力を入れたいという意図があります。基本法の施行により健康診断の実効性の向上なども期待されています。
教育について
脳卒中や心臓病は発症直後である超急性期の治療が極めて重要であることは、医療に関わる人ならば誰もが知っている常識です。そういった知識を患者やその家族に向けて普及させていくことも非常に重要なことで、例えばどのような状態ならば急ぐ必要があるのか、その兆候や症状なども踏まえ啓発されることが期待されています。
また脳卒中や心臓病の日々の予防についても見逃せません。各都道府県や市町村の取り組みだけでなく、例えば国の取り組みとして、義務教育など若いうちからの教育に盛り込まれることも期待できるとされています。
ビッグデータの収集と治療への活用
行政の支援が必要なビッグデータの収集のための疾病登録にも期待が高まっています。膨大なデータを得ることにより、高いエビデンスに裏打ちされた対策や新しい治療法が確立される可能性も示唆されています。
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ほけんのトータルプロフェッショナル2018年12月に成立した脳卒中・循環器病対策基本法とは?のまとめ

2018年12月に成立した脳卒中・循環器病対策基本法成立の背景や、この基本法に求められていることなどを紹介してきました。日本の死亡原因第2位である心臓病含む循環器病、第3位である脳卒中に関連する法律ができたことで、第1位のがんへの対策であるがん対策基本法も含め、日本の抱える3大疾患への対策が進んできたことを意味します。
医療に携わる者としてぜひこの法律を理解し、今後の仕事に生かしてもらえればと思います。
