長くこの業界に身を置いているMRからするとここ数年における病院の訪問規制の変化は非常に激しく、ともすれば「面談ルールが厳しすぎる!」「Drに会えないので仕事にならない!」と憤りを隠さない方もいらっしゃるでしょう。けれども逆に私は、この状況はチャンスだと考えています。
考えてもみてください。ほかのMRが会えてないDrとコンタクトを取り、自分だけが面談し情報提供できるのであれば、まさに自分だけの独壇場になるではありませんか!
ということで、今回は面談ルールが厳しくなかなかDrに会えない施設での面談方法の例を紹介していきます。
病院のDrとの面談ルールは年々厳しくなっている

病院のDrとの面談ルールが厳しくなってきたのは2010年頃からでしょうか。それまで割と自由に出入りできた医局へのMR出入禁止を打ち出す病院が増えてきて、それに伴ってDrとの面談ルールを厳格化させる傾向が見られるようになりました。
以前は、医局のDrの席まで面談しに行ったり、各席を廻り資料やを置いたりすることも自由でした。それどころか冷蔵庫の中身を補充したり、医局にかかってきた電話を取ってDrに取り次いだり、仕事終わりにお寿司やビールを手配したり、ある意味医局の雑用、便利屋的な扱いであったこともありました。
けれどもだんだんと医局内でのMRの勝手な行動が制限されるようになり、行動範囲も談話室のみなどルールが敷かれるようになり、そして医局への立ち入りが完全に禁止になっていきました。もちろんそれは、個人情報含め情報の取り扱いに関するリテラシーが確立されてきたとか、世代交代によりMRに会うことに煩わしさを感じるDrが増えてきたとか、様々な要因が考えられます。
ただこの流れは、何もMRの業界に限った話ではありません。過去には各企業のオフィスに保険屋さんが入り浸り、忘年会や新年会のパンフレットを持った飲食店の営業が節目ごとに現れ、面談室は証券会社の営業が目を光らせていたのですが、やはり時代とともに消えていきました。
医局への出入についてと同様に、情報管理の観点だったり、本来の業務の妨げになるなどの理由が挙げられます。この変化は時代の流れであり仕方のないことで、もはやその是非について論じるのはナンセンスなのです。
医局にまで入りDrに面談できる病院は少なくなっている?

病院のMR活動に関するルールが厳しくなり、医局への出入りはおろか病院への出入すら禁止になる病院も増えてきていますが、逆に今でも医局への出入りを制限しない病院もまだまだ存在します。もちろん、さすがに上記のような医局の雑用、便利屋的に自由に活動できる所は最早皆無と言えますが、各Drの席まで自由に訪問できるようなところもまだまだ存在します。
ただし、医局への出入りをルール化し制限しない、DrがいつでもMRの面談に応じてくれるような病院でも、決して油断してはいけないと肝に銘じるべきでしょう。医局員の誰もが医局への出入り自由を歓迎しているわけではない、快く思わないDrもいないとも限らないからです。
そういう反対派のDrはちょっとしたきっかけで、ほかの病院のように医局へのMRの立ち入りを制限しようと声を上げます。今や世論ががDrとMRの親密な付き合いを許さない時代であり、多くの病院がそれに倣い厳格なルールを設けているからこそ、そういった声は通りやすくあっという間にルール化されてしまいます。
だから例えば、医局内で大声で話す、ターゲットのDrと話すのに夢中でほかのDrにぶつかってしまう、隣の机の書類を落としてしまうといった不注意は起こさぬよう神経をとがらせておかなければいけませんし、ましてや壁に貼ってある当番表の写真を撮るとか、Drのポストを覗き込むとか、そういった迂闊な行動や疑いを持たれそうな行動にも気をつけなければいけないでしょう。
大きい病院になればなるほどDrとの面談方法のルールはアポイント制が主流に

最近では多くの病院がアポイント制を敷いています。特に大規模な病院であればあるほどそのような傾向にあるようです。
病院の規模が大きくなればなるほど診療科も多岐にわたり、勤務するDr数も多くなります。そうすればその分訪問するMRも多くなり、その存在がDrの業務に支障をきたしたり、Drに限らず院内のスタッフに迷惑をかけてしまうケースも多くなるからでしょう。
また大きな病院ほど外からの評価を気にするというのあります。「スーツを着た人たちが通路にずらっと並んでいた」「業者っぽい人が外来の待合でだべっている」そんな患者からの声を、病院としてはとても気にしなければならないのです。
ですから、Drとのメールであったり、事務を通してのFAXだったり、あるいはドクターJOYなどのツールを活用したアポイント制のルールをとるのです。アポイント制のルールにすれば、DrがMRの面談要請に対して了承を出さない限り、MRは病院に入ることがありません。
もちろんDrによっては積極的にMRとコンタクトを取ろうとする場合もありますが、Drの多くはMRとの面談は最低限に控えることが多く、結果MRが病院に入る数を劇的に減らすことができるのです。
Drとの面談方法のルールが厳しくなかなか会えない施設ほどチャンスがある?

ルールの厳格化によってDrとの面談が困難な病院が増えてきていますが、それは果たしてMRにとって機会の損失なのでしょうか?確かに面談ルールが厳しくなりDrと会えない状況をそのまま享受してしまうならば、情報提供する機会も少なくなり、MRにとっても機会の損失でしかありません。
しかし逆に考えれば、ほかのMRも情報提供できていないのです。つまりそのような中どうにか面談できる方法を確立させ、それをうまくほかのMRから隠し通すことができれば、あるいはそれを強みにしてほかのMRとの交渉材料にすることができれば、自分にとって強力な武器になることは間違いありません。
Drと会えない病院は、逆にチャンスと考えるべきです。市場もまだまだ荒らされていない可能性があります。
もしくは、他社の優秀なMRなら既にうまく面談する方法を知っていて、そのMRの独壇場になってしまっている可能性も否定できません。それを防ぐ意味でも、Drに会えない病院だからといって諦めるのではなく、どうにかDrと面談できる方法を模索していかなければならないのです。
ルールが厳しい中Drと面談する方法5選!

病院の中には病院の面談ルールが存在し、それによってMRの行動は制限されてしまいます。しかしそれならば病院の外で面談すればいいわけです。
ここでは「ちょっと見方を変える」ことでDrとの面談が可能になる方法、考え方について紹介していきます。
ルールが厳しい中Drと面談する方法その1:朝駆け・出待ち

Drは何も24時間365日病院に詰めているわけではありません。もちろん稀にそういった稀有なDrもいないわけではないのですが。
ともかく多くのDrは朝出勤してきて、夜は家に帰ります。そこを狙おうという考えです。
特に夜ならば「他に用事があって病院付近をうろうろしていて、たまたま退勤するDrに会っちゃった」といった体を取りやすいでしょう。仕事も終わってあとは帰るだけ、そんなちょっと気が抜けている状態なので、仕事中よりも話しかけやすいことも多いようです。
また遅い時間帯ならば周囲に人がいない場合も多く、周囲の目を気にしなくて良いというメリットもあります。ただしDrが急いで帰りたい、あるいはプライベートと仕事はきっちり分けたいということも少なくはないですので、話してみた感じDrの様子がどうなのか、うまく空気を読む必要がありそうです。
逆に朝の時間帯は皆同様に出勤時間になりますので、周囲の目が気になります。仲が良いだとか、1回面談した時に宿題をもらうとか、朝声をかけてもいいかどうか聞かなければいけないかもしれません。
ただし朝の時間帯に声を掛けるメリットとして、これからまさに薬を処方する時間帯であるということです。Drと面談した際に、その時にはこちらの薬のセールスに納得してもらったとしても、いざ薬を処方する段階になって「忘れていた」「つい使い慣れた方を処方した」という話は誰もが聞いたことがあるでしょう。
しかし朝一番の出勤時であれば、これからまさに薬を処方しようという時間帯で、よりDrに自社の薬の存在を印象付けることができます。Drの行動を変えることができる一番のタイミングでもあるのです。
朝と夜、いつもと違う時間帯に病院を訪問することで見えてくる何かがあるかもしれません。
ルールが厳しい中Drと面談する方法その2:バイト先

どちらかといえば中小病院に多いのですが、Drによってはメインで勤めている病院以外にも、バイトとしてほかの病院にいっていることが多々あります。エリア内の病院や開業医で、明らかにその病院に専門のDrがいないにも関わらず「循環器科」「神経内科」「小児科」などの外来が存在することがありますが、それはまさにほかの病院からバイトのDrが来ている証拠です。
もちろんその多くはその病院に息のかかっている大学からの派遣なのですが、そうでない場合も決して少なくはありません。また外来は行なっていなくても、例えば内視鏡検査だけやりに来ているといったケースも稀にあるようです。
そしてメインで勤めている病院よりもよほどよく話ができるということも決して少なくありません。「あっちだとルール厳しくてあまり喋れないんだけどさ」なんて話もよく聞かれるものです。
ただし自分のエリアの病院にバイトに行っているならまだしも、ほかの担当者のエリアにバイトに行っているようだとなかなか気付きようがありません。うまく事務の人や病院事情に詳しいMRに聞くという手もありますが、上述の「ルールが厳しい中Drと面談する方法その1」で紹介した朝駆け・出待ちなどを継続することで気づくケースもあるようです。
これはもちろん訪問のルールがそれほど厳しくない病院でも十分可能性があるもので、「◯曜日はDrと会えない」が実は単に「その曜日は病院にいない」可能性も考慮すると良いかもしれません。
ルールが厳しい中Drと面談する方法その3:電話

MRという仕事をしているとなかなか思いつかない方法の1つがこの電話です。外来のない時間帯、手術がない時間帯に直接病院に電話をしてDrを呼び出し、面談したい旨を伝えることで意外にも会ってくれた、ということがままあります。
実のところ、Drのもとには多くの電話がかかってきています。他院や他施設、薬局からの問い合わせはもちろんのこと、大学のスタッフからの連絡、保険やらマンションやら輸入車などのセールスまで、その種類は実に幅広いと言われています。
もちろん病院の受付を通すこととなりますので変なセールスの電話は弾かれることが多いそうですが、基本的に製薬会社の電話はどの受付もDrに通すと言われています。またDrもぶっきらぼうではあるものの、メールよりもしっかりと返事をしてくれる場合もあるようです。
もちろん頻度については考えなければいけませんが、自分がDrにとって有益な情報を持ってきていると自信を持てるならば、ぜひ電話という方法も試していただければと思います。
ルールが厳しい中Drと面談する方法その4:駐車場

朝駆け・出待ちに通じるものがありますが、Drの通勤の車の前で待っているという方法で、これにあたっては夜退勤後のDrの後をこっそりとつけるなどして事前にDrの通勤の車を調べておく必要があります。また病院のスタッフ専用の駐車場があり、通常そこに一般の人が入れないという状況の場合は注意が必要です。
理想的なシュチュエーションとしては、Drの通勤用の車が病院の敷地の外にある、しかもそれが病院の敷地を出てから少し歩く距離にある、といったところでしょうか。その方がDrに対しても「近隣を歩いていた際に偶然会えた」という体を取りやすいですし、駐車場に着くまでという時間を区切った状態で話をすることで、無下に断られるリスクを減らすことができる可能性があるからです。
また通勤が車ではなく電車である場合もチャンスがあるかもしれません。ホームで待つふりをして、あるいは誰かと待ち合わせをしているふりをしながら、「電車が来るまで」と、Drと話ができるかもしれません。
ルールが厳しい中Drと面談する方法その5:近隣のコンビニや飲食店

これも事前にDrの行動パターンを調査し熟知しておく必要がありますが、場合によっては非常に有効な方法となるでしょう。なぜならばDrと話をするにあたっても、Drの趣味や嗜好を理解しながら話ができる場合が多いからです。
業務中にコンビニに来るとなれば、おそらくそれは食事を買うためでしょう。あるいは、午後の往診に行く途中なのかもしれません。
また現在ほとんどの病院が敷地内禁煙となっていますので、たばこ休憩に来ている場合もあるでしょう。嫌煙ブーム真っ盛りの現在において、一緒にタバコを吸う仲間ならということで距離が一気に縮まる可能性もあります。
面談ルールが厳しくなって思うように活動できない!?病院でなかなか会えないDrと会う方法5選!のまとめ

病院の面談ルールが年々厳しくなり、Drとなかなか会えないというMR活動における背景とその理由、そしてそれに対してどのようにしてDrと面談できるのか、その方法について紹介してきました。ただし、ここで紹介したのはあくまでも例にすぎません。
もしかしたらこれ以上に画期的なDrとの面談方法があるかもしれませんし、各病院によっても対処方法は様々あることでしょう。何より大事なのは「面談ルールが厳しくてDrと会えないから仕事ができない」ではなく、「どうにかして“会える”方法を見つけて仕事にしてやろう」という考えに変換することです。
そして慎重に、十分に、病院やDr含むそこで働くスタッフを観察しなければいけません。そのためには一度はその病院を受診してみるとか、受診でなくても私服を着て患者や見舞客のふりをして待合に座っているとか、1週間くらい無駄にする気持ちでその病院に居座り続けることも必要かもしれません(病院の規模が大きくなればそれだけ、1人ずっと待合に座っている程度なら疑われることは少なくなることでしょう)。
MRの仕事は今や「医局前に立っている」だけでは成り立たなくなってきています。若手のMRの中には「医局前に立っている」という意味がわからないという人もいるくらいです。
考え方や見方を変え、是非とも自分だけのDrとも面談方法、攻略方法を編み出していただければと思います。